2025/06/19
テレビを見ているとき、お絵描きしているとき、お散歩しているとき…ふとお子さまの顔を見ると、お口が開いているなぁと思うことはありませんか?
「うちの子、いつもお口がぽかんと開いている」「食事中に舌が見えている」「最近、風邪をひきやすくなった気がする」
このような光景やお悩みを抱えていらっしゃる親御さまは、実は非常に多くいらっしゃいます。
大人の方でも、「マスク生活が長く口呼吸が習慣づいてしまった」「最近口元が下がってきた」「食事の時にむせることが増えてきた」
こういった悩みを患者様から最近よく耳にします。
お口ぽかんは口周りの筋肉が低下してしまうので、このバランスが崩れてしまい歯並びが悪くなることや、嚥下能力に影響が出てくることがあります。
このような「お口ぽかん」の問題は、口腔筋機能療法(MFT:Oral Myofunctional Therapy)で改善することができます。
今日は、小さなお子さまからご高齢の方まで、すべての世代に役立つ口腔筋機能療法について、詳しくお話しします。
口腔筋機能療法(MFT)とは?
口腔筋機能療法(MFT)は、舌や口唇、頬などの口腔顔面筋のトレーニングを通して、お口周りの筋肉の不調和を整えていく療法です。歯並びに関係している舌、唇、頬などの口腔周囲筋を、正常な環境に整えることを目的とした訓練法なのです。
なぜ口腔筋機能療法が必要なの?
お口の中と外には、様々な筋肉があります。外側には唇や頬の筋肉、内側には舌の筋肉があり、これらの筋肉のバランスが取れた位置に歯は安定して並びます。
しかし、舌突出癖や指しゃぶりが開咬や上顎前突を招くほか、アレルギー性鼻炎などによる口呼吸の習慣が、お口周りの筋肉の弛緩につながることもあります。
特に子供の身体は成長段階にあるため、柔軟で比較的小さな負荷でも歯並びや咬み合わせに悪影響を与えてしまいます。
「お口ぽかん」が引き起こす5つの深刻な問題
1. 虫歯・歯周病のリスク増加
お口の中が乾燥し、唾液の働きが低下してしまい、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすい環境になります。また、乾燥により着色が着きやすくもなってしまうので、お口が開いている子は前歯が黄色くなっていることが多いです。
2. 口臭の原因
口の中の細菌が増えることで口臭がきつくなります。朝起きたときの口の乾燥感も、口呼吸が原因の場合が多いのです。
3. 風邪をひきやすくなる
鼻で空気を取り込むと、空気中のウイルスやほこりは鼻水や鼻毛などのフィルターにより侵入を防がれます。お口ぽかんのお子さまは直接口から空気を取り込んでいるので、このフィルターがないため風邪をひきやすいです。
4. 顔の発育への影響
口で呼吸をしていると顎を前に出す姿勢になりがちで、これが長期間続くと顔の発育にも影響を与える可能性があります。
大人の方だと、今度は口もとの筋肉が衰えやすくなり、口もとのたるみが見られてきます。
5. 歯並びの悪化
舌の位置が正しくないと、歯を内側から押す力と外側から押す力のバランスが崩れ、歯並びが悪くなってしまいます。
6. 嚥下能力の低下
口腔周囲筋がうまく使えないと、嚥下に影響をきたし、むせや誤嚥のリスクが高まります。
お子さまの気になる癖をチェック!
以下の項目で、お子さまに当てはまるものがあるかチェックしてみてください:
日常の癖
- □ いつもお口がぽかんと開いている
- □ テレビを見ているときや集中しているときに口呼吸をしている
- □ 話すときに舌が見える
- □ 舌で前歯を押す癖がある
- □ 指しゃぶりが続いている(4歳以降)
- □ 頬杖をよくつく
- □ 爪を噛む癖がある
食事・飲み込み
- □ 食べるときにクチャクチャ音を立てる
- □ 飲み込むときに舌が見える
- □ 飲み物を飲むときにゴクゴク音がする
- □ 食べこぼしが多い
発音・睡眠
- □ サ行、タ行、ラ行の発音が不明瞭
- □ いびきをかく
- □ 朝起きたときに口が乾いている
2つ以上当てはまる場合は、歯並び・咬み合わせを悪くする癖があると言えます。
高齢者の方にも大切な口腔機能
口腔筋機能療法は、お子さまだけでなく、ご高齢の方にとっても非常に重要です。加齢とともに口腔周囲筋が衰えると、以下のような問題が生じる可能性があります:
高齢者の口腔機能低下のサイン
- 飲み込みにくい(嚥下困難)
- むせやすくなった
- 口の中が乾燥しやすい
- 発音が不明瞭になった
- 食べこぼしが増えた
- 口角が下がってきた
- 口臭が気になるようになった
これらの症状は、口腔機能の低下を示すサインです。適切なトレーニングを行うことで、改善や予防が期待できます。
正しい舌の位置を知っていますか?
リラックスした状態では、舌は上あごのスポットについていて、口唇は閉じているのが理想的です。
舌の正しい位置「スポット」とは?
上の前歯の根元から少し後ろ、上あごのふくらんだ部分を「スポット」と呼びます。舌の先がここに軽く触れているのが正しい位置です。
間違った舌の位置:
-
- 下あごの歯に触れている
- 上下の歯の間にある
- 口の床に落ちている
- 上の前歯を押している
家庭でできる簡単MFTトレーニング
小児向けトレーニング
スポット練習
目的:正しい舌の位置を覚える 方法:
-
-
- 舌の先を上あごのスポット(上の前歯の付け根の少し後ろ)につける
- そのまま10秒間キープ
- これを5回繰り返す
- 1日3セット行う
-
高齢者向けトレーニング
舌の体操
目的:舌の筋力維持・向上 方法:
- 舌を前に出して5秒キープ
- 舌で右の口角を触って5秒キープ
- 舌で左の口角を触って5秒キープ
- 舌で鼻を触るように上に伸ばして5秒キープ
- これを3セット行う
MFTの効果と期待できること
お子さまへの効果
- 正しい歯並びの発達促進
- 口呼吸から鼻呼吸への改善
- 発音の明瞭化
- 集中力の向上
- 風邪をひきにくくなる
- 矯正治療期間の短縮
- 矯正治療後の後戻り防止
高齢者の方への効果
- 嚥下機能の改善
- 誤嚥性肺炎の予防
- 口腔乾燥の改善
- 発音の明瞭化
- 表情筋の活性化
- 認知症予防への効果
- QOL(生活の質)の向上
専門的な治療が必要な場合
以下のような症状がある場合は、専門医での診察をお勧めします:
お子さまの場合
- 4歳を過ぎても指しゃぶりが続いている
- 著しい出っ歯や受け口
- 常時口呼吸で改善されない
- 発音に大きな問題がある
- いびきが激しい
高齢者の場合
- 頻繁にむせる
- 食事中に咳き込むことが多い
- 体重減少が続いている
- 発熱を繰り返す
- 明らかな嚥下困難
当院でのMFT治療
当院では、お近くの宇治市はもちろん、京都市、城陽市、八幡市、久御山町からも多くの患者さまにお越しいただいております。
当院スタッフが、口腔筋機能療法の専門的な知識と経験を活かし、それぞれのお子さまの問題に合わせて治療を組み合わせることで、本来、我々人間が自然な環境で育った場合に身につけることができる口もとの筋肉や嚥下の能力を発達、継続させるお手伝いをします。
当院のMFT治療の特徴
- 歯科衛生士・管理栄養士が指導:口の専門家である歯科衛生士と管理栄養士が指導します。
- 個別評価:患者さま一人ひとりの口腔機能を詳しく評価します
- カスタマイズされたプログラム:年齢や症状に応じた最適なトレーニングプランを作成します
- 継続的なサポート:定期的な検診で進捗を確認し、プログラムを調整します
- ご家族への指導:ご自宅でも継続できるよう、わかりやすい指導を行います
- 託児サービス:小さなお子さまのいるお母さまにも治療に通っていただけるよう、保育士による託児を行っています
治療の流れ
- 初回相談・検査:口腔機能の詳細な評価を行います
- 治療計画の説明:個別の治療プランをご提案します
- トレーニング開始:段階的にトレーニングを進めます
- 定期チェック:月1回程度の経過観察を行います
- 維持期:良好な状態を維持するためのフォローアップ
矯正治療との相乗効果
当院では矯正治療も行っており、MFTと組み合わせることで、より効果的な治療が可能です。「歯を抜きたくない」「よく噛めるようになりたい」「白くきれいにしたい」「少しでも痛みを感じないように治療してもらいたい」など、患者さまの様々なご要望に、可能な限りお応えいたします。
よくある質問
Q1: 何歳から始められますか? A: 一般的に3歳頃から可能ですが、お子さまの理解力や協力度によって個人差があります。まずはご相談ください。
Q2: 高齢者でも効果がありますか? A: はい。年齢に関係なく、適切なトレーニングを行うことで口腔機能の改善が期待できます。
Q3: 保険は適用されますか? A: 基本的に自費診療となりますが、症状によっては保険適用される場合もあります。特に小児のお子さまや高齢者の方はほとんどの方が保険適用です。詳しくはお問い合わせください。
Q4: 矯正治療と併用できますか? A: むしろ併用することで、より良い治療結果が期待できます。矯正治療の効果を高め、後戻りを防ぐ効果があります。
まとめ:今日から始める健康なお口づくり
口腔筋機能療法(MFT)は、年齢を問わず、すべての方に役立つ健康法です。特に成長期のお子さまにとっては、将来の歯並びや全身の健康に大きな影響を与える重要な取り組みです。
また、ご高齢の方にとっても、口腔機能を維持・改善することで、食事の楽しみを保ち、健康寿命の延伸につながります。
まずは簡単なトレーニングから始めて、気になる症状がある場合は、お早めに専門医にご相談ください。当院では、患者さま一人ひとりに最適なMFTプログラムをご提供し、健康なお口づくりをサポートいたします。
健康なお口は、健康な体の入り口です。今日から家族みんなで、正しい口腔機能を身につけていきましょう。
矢野歯科医院では、口腔筋機能療法(MFT)の専門的な診療を行っています。お子さまの歯並びや口呼吸が気になる方、ご高齢の方で口もとや嚥下機能に不安がある方は、お気軽にご相談ください。
ご予約・お問い合わせ 〒611-0044 京都府宇治市伊勢田町名木3丁目1ー4 矢野歯科医院 院長:矢野隆嗣 お電話でのご予約・お問い合わせをお待ちしております。
アクセス 宇治市、城陽市、八幡市、久御山町からのアクセスも良好です。 駐車場完備・保育士による託児サービスもございます。
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皆さまのご来院を心よりお待ちしております。一人ひとりに合わせた丁寧な治療で、健康なお口づくりをサポートいたします。